共産党 総選挙総括と参議院選挙方針どうするのか 11月9日 鈴木元
総選挙後、各党は総括会議を行っており、敗北した党は責任問題そして人事の交代も浮上している。しかし共産党だけは、そうした論議が行われている様子が表だってない。書記局長の小池氏は自らのフェイスブックの7日付で「選挙中、飛行機に乗りすぎ航空性中耳炎に羅患。本日の再診で,完治です」とのんきなことを書いている。マスコミの取材でも三役が答えていないようで、5日「日刊ゲンダイ」が元国対委員長の穀田氏に「今回の選挙結果をどう見ているか、後輩の議員に託すことは」と質問し、穀田氏は当たり障りのないことを答えている。
共産党は来る4中総でどういう総選挙総括・参議院選挙に向けての方針を出すのか。最近の十数年はいつも同じパターンであった。直後の常任幹部会声明で「政策は正しかった、政策が浸透したところでは支持が広がったが、党の力量が後退していたために生かせなかった。何としても130%の拡大を」と言って「月間」「特別期間」を繰り返し党を疲弊させてきた。今回の常任幹部会声明でも「赤旗のスクープで自公の過半数割れを実現、党の力量不足で・・」。この見解を少し詳しくして第4回中央委員会総会決定とするのだろうか。
私はすでに書いてきたように①共産党の後退は今に始まったことではなく1980年代から始まっている。その分析と改革の方向性について拙著「志位和夫委員長への手紙」(かもがわ出版)などで書いてきた。②昨年の1月に松竹伸幸氏と私が「党首公選制をはじめとした党改革を実行しなければ、共産党は国政では取るに足りない勢力になってしまう」との提案を出版したのに対して志位指導部は彼が委員長になって23年を経過しているが、始めて破廉恥罪を除き政治的理由で松竹氏と私・鈴木元を問答無用にを除名した。それに対して「朝日新聞」などが「やりすぎではないか」と書くと、志位氏は記者会見において興奮して「朝日に指図される筋合いはない」と答弁し国民の顰蹙をかった。その結果4月の統一地方選挙で共産党は都道府県議会の議員ならびに政令指定都市の議員の2割を失い、現職議員135名を落選させた。続いて沖縄県会議員選挙、東京都議会補欠選挙で敗北した。③その上での今回の総選挙であった。いつも後退・敗北の理由を分析せず責任も取らずに来たつけが回ってきた。さてそれでは以上を踏まえた上で今回の選挙固有の誤りはどこにあったのか。
三つの誤りが考えられる
1)選挙前に立憲の野田代表から「金権腐敗議員44名に対して候補者統一して闘おう」との申し入れがあったが、あれほど市民と野党の共闘を重視していた共産党は拒否した。これは政治の革新を願う人々の失望を禁じえなかった。
2)共闘を放棄した共産党は比例での議席増を目指して小選挙区で「立てられるだけ立てる」として前回の105名に対してその倍を上回る213名もの候補者を急遽擁立した。私は「小選挙区の候補者数を増やしたからと言って比例の得票が増えるわけではない」「むしろ乱立によってその実務に負われ、比例のための全党運動の足を引っ張り、後退する危険があるから止めておきなさい」と警告した。結果は私の警告通り比例票で80万票も後退させた。そのうえ候補者の2/3に及ぶ143名が供託金没収となり、その額4億2900万円となる財政困難をもたらした。
3)太い柱として「共産主義=自由」を押し出した。今回の選挙は自民党の金権腐敗を争点としながらも、国民の「生活困難と格差の解消を」の切実な願いに応えることであった。しかし志位氏を先頭に街頭演説においても「共産主義=自由」を長い時間をかけて声高に語られた。これは多くの有権者を退けた。どこの世界に「共産主義」を語って支持を得る選挙があるのか、まったく馬鹿げた言動であった。
これらに対して志位指導部は第四回中央委員会総会でどのように総括するのか。また「赤旗のスクープが自公過半数割れを切り開いた、しかし党勢力後退がこれを生かし得票と議席の増を実現を出来なかった。参議院選挙に向けて党の力量強化に務めよう」に留めるのか。そして200名を超える中央委員は唯々諾々とそれに満場一致で賛成するのか。
私が述べる問題に、多少の言い訳じみた誤魔化しの論を展開するかも知れない。しかし今までの選挙結果と異なるところは、21年総選挙の三倍にも及ぶ4億2900万円もの供託金没収は、どのように弁護論を立てようとも厳然と地方党組織に残る。これをどうするかを抜きに地方党組織の活動は組み立てられない。しかし志位指導部はこの4億2900万円に及ぶ「借金」解決の方針は提起出来ない。何回か常任幹部会を行い「老練」な幹部が「今が踏ん張りどころだ」と叱咤激励しようと「無いものはない」し、「借金返済は逃れられない」。共産党は財政問題で崩れていき参議院選挙・都議選どころではない。なお今回の得票から推察すれば京都の倉林氏の再選はありえなくなるし、東京の吉良氏も極めて危ない。比例の3名獲得も怪しげであるだろう。党の中枢である常任幹部会で志位指導部の更迭を求める動きは起きそうにもない。前回私が警告したように共産党は改革のチャンスを逸し自滅していきそうである。
まさに拙著「さようなら志位和夫殿」(かもがわ出版)であり、松竹氏が共産党相手の裁判の開始にあたって「裁判が終わるまで共産党はあるのでしょうね」の世界になってきた。そして松竹氏の除名は間違っていると主張した福岡県の神谷氏は除籍と解雇を受けたが、その無効を訴える裁判の弁護士が決まったと報告されている。いずれにしても反省もまともな総括もせず誰も責任を取らない共産党は旧・日本軍と同じで自滅するしかなさそうである。日本の革新勢力の悲劇である。志位氏の名前は「長い歴史を辿った共産党を潰した時の委員長」として残るだけになりそうである。
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