非公認問題「起死回生」になるか、野党共闘の終焉 10月8日 鈴木元
(1)10月4日、石破首相による所信表明演説が行われた。マスコミ各社の報道、野党の談話においても「中身のない言葉の遊び」と論評された。石破氏は永く「自民党内野党」として、その政策・主張の是非は別にして、独自の発言を行ってきたことによって国会議員の中では少数派であったが、党員・支持者からは人気を博してきた。しかし首相になって初めての所信表明演説は自らの主張を取り下げ年来の自民党の主張にすり寄った。
ただ「石破氏の変質」を言う立憲が発表した選挙公約を見ると従来の「消費税減税」「原発の段階的廃止」が消えている。石破氏の「党内野党」から首相へ、立憲の野党かの「政権交代」に伴う判断なのだろう。政権を担うためには党内多数の支持に留まらず、国民の多数の支持を得なければならない。ここがむつかしく「一人の政治家としての意見」だけでは駄目であることが改めて明らかになった。共産党の志位氏も2022年の参議院選挙を前にした5月7日「朝日新聞」のインタビューに応えて「我が党が入った政権では自衛隊は合憲となる」と答えた。自衛隊を認めるだけではなく「合憲」とまで言ったのである。しかしその後、松竹氏が「将来は綱領に基づいて自衛隊は解散するが野党連合政権では自衛隊は認めざるを得ない」としたのに対して2023年3月6日松竹氏を除名するにあたってその第一の理由として「綱領に違反して自衛隊を容認した」と支離滅裂な態度を取ってきた。
裏金疑惑議員の公認問題と合わせて総選挙で自民党は厳しい局面に立たされる可能性が合った。
(2)しかし小選挙区制の下、相対第一党である自民党は野党が共闘を組んで候補者の一本化をしない限り有利であることは間違いない。先日述べたように立憲代表の野田氏の共闘働きかけにも関わらず共産党は拒否した。私の住んでいる京都においても一区をはじめどの選挙区においても野党は分立して候補者を擁立することによって自民党を利することになり自民党は小選挙区制では圧倒的に有利になる可能性が出てきた。共産党はどういう責任を取るつもりなのか。
永く自民党で活動してきた石破総裁は狡猾である。旧安倍派の「(裏金議員を)公認しなければ自民党は過半数が取れないのではないか」との居直りを認めていては、自民党は国民の支持を得られないと判断すると一転して6日、石破総裁・森山幹事長・小泉選対委員長は相談し、裏金問題で処分などを受けた6名の幹部(下村・西村・高木・萩生田・三ツ林、平沢)の非公認を発表した。合わせて政治資金不記載など30名の比例との重複立候補を認めない、いいわゆる「救済措置」を取らないという方針も明確にした。そのために石破・森山・小泉も比例との重複しないととした。これで「自民党は生まれ変わりました」と訴える方向のようである。それに対して野党各党は「限定した非公認であり、これでけじめが付いたとは言わせない。企業・団体献金を改めず引き続き継続するかぎり問題の抜本的改革にならないと」と主張していくとしている。
これらのやりとりの国民的反応を見て石破首相は上記の対応だけでは厳しいと判断してか、7日の衆議院・8日の参議院での立憲などの野党の質問に応えて、上記の6名の非公認に留まらず、追加の非公認を歩発表するなどの措置を取る旨の答弁した。この自民党のちょいだしの方針と野党の主張のどちらが国民の理解・支持を得られるかが今回の総選挙の最重要争点になりそうである。
(3)2021年総選挙において、閣外協力という形であったが候補者調整が行われた。志位委員長(当時)等は「共産党も入った政権近し」などと全く願望に基づく情勢演説を行っていた。しかし結果は立憲は109名から96名、共産党は12名から10名へと後退敗北した。枝野立憲代表は敗北の責任を取って辞任した。共産党の志位委員長は「方針は間違っていなかった」「正しい方針のもとに闘って後退したからと言って責任問題は無い」と居直った。それ以降、共産党はつい最近まで野党共闘の意義について語り、さも立憲が野党共闘に消極的なことが野党共闘が進まないかかのような言説を行ってきた。ところが野田代表が「自公政権の後の野党政権には共産党とは一緒にはやらない」(21年選挙も閣外協力であり、ともに政権に付く政権共闘ではなかった)「安保法制の即時破棄を言わない」ことを「理由にして」立憲が提案する「金権疑惑議員28名にたいして候補者を絞って闘う」ことを拒否した。
小選挙区において前回の100名余りの候補者にたいして、今回は200名を超える候補者を出馬させるようである。その結果、前回の10名当選にたいして12名ー14位の当選が見通されるかも知れない。野党共闘による自公政権の打倒より自らの党派利益を優先させたのであるが歴史的には取り返しのつかない誤りである。しかし小選挙区で候補者をたくさん出せば比例の票は増え当選者が増えるとは限らない。先にも書いたが2012年の総選挙において前回の選挙の候補者152名を299名に増やしたが得票は125万票も減らした。選挙は総合的なもので一つの指標だけでことが進むものではない。
今回、「共闘拒否」に基づき急遽200名をを超える候補者を擁立しようとしている。9日の解散は明日のことである。財政難などから現場の県委員会・地区委員会の「専従職員」は大幅に減っている。候補者の擁立・事務所の確保・ポスターなどの選挙機材の確保・アナウンサー等の人材確保を限られた時間内で行わなければならない。それに手が取られるために比例選挙を正面に据えた全党運動を組織することがおろそかになる危険がある。現場で選挙を組織したことのない志位議長・田村委員長・小池書記局長などの幹部にはこうしたことは分からず「小選挙区候補者を可能な限り増やし比例の得票を増やす」という単純な思考で動いているが結果は危ういものである。
実際、京都においても穀田国対委員長の後継者として昨年2023年9月6日に立候補の記者会見を行った京都一区の井坂氏の事務所開きは漸く10月6日に行われた。ここまで書いている今日10月8日「赤旗」に総選挙闘争本部の訴えが出された。それによると9月30日の三中総全国決起集会以降決められた日報を行っていない地区が32地区もあり支持拡大100以下の地区が72地区もあると書かれている。そして三中総を討議した支部は25.5%、読了・視聴した党員は12.5%と記載している。このような状況では200名もの候補者を擁立しても比例の得票が大幅に増えるかは、はなはだ怪しげである。
(4)ところで先に私は市田副委員長の「階級闘争の弁証法」について現実の戦局との関係を全く触れていないという点を批判した。彼を含めて志位指導部はマルクスの「階級闘争の弁証法」を持ち出し「我々の闘いが前進したので相手側は巻き返しをはかり、それとの戦いを通じて党は鍛えられる」と説き現在の困難を反動側の攻撃であるとしている。しかし共産党は「何時前進したのか」反動勢力は「何時どのような形で巻き返しの攻撃をしたのか」が明記されていない。
少なくとも21年の総選挙、22年の参議院選挙、23年の統一地方選挙では敗北後退している。続く沖縄県議選、東京都議補選でも後退してきた。近年を見る限り共産党の躍進にたいして反動勢力が巻き返しの取り組みをおこなっている等はない。遡って2000年第20回大会以来この24年間で衆議院議員は41名から10名。「赤旗」の部数は385万から85万、つまりこの24年余りで衆議院議員も赤旗も1/4に減ってきたのである。共産党の躍進の前に反動勢力が巻き返しの手立てを取ってきたなど事実ではない。さらに遡ると1950年の党分裂、1955年の再統一をへて1958年の第7回党大会から2000年の第20回党大会までは議員数も赤旗読者も増えてきた。つまり党の党の統一を取り戻してから今日まで、前半の22年間は増えてきたが後半の24年間は減り続けてきたのである。これは共産党が変化した日本社会の実情に合わない方針取ってきたから後退したのであり、その総括・分析による党改革を行わない限り、政局と各党の取り組みによって選挙で一時的に増えることはあっても大局的に共産党が前進することは無い。松竹氏も私・鈴木元も「共産党はこのまま改革せずいたら、取るの足りない勢力になる。最低、全党員が参加した党首公選制の実施などの改革を行う必要がある」と提起した。それに対して志位指導部は、聞く耳持たずで問答無用に松竹。鈴木を除名し広く国民から批判され、昨年の統一地方選挙で都道府県・政令指定都市の議員を2割り減らし135名もの現職議員をなくしたのである。そして 今回の総選挙を前に松竹氏の除名を批判した元福岡県党常任委員の神谷氏を除籍・解雇した。それを批判した元福岡県会議員候補の砂川あやね氏を除籍した。
共産党が今すぐやることは総選挙において野党共闘によって候、補者統一を成し遂げ自公政権を倒すことであり、引き続き松竹・鈴木の除名、神谷・砂川氏の除籍を取り消し謝罪し党籍を回復し党再建のための改革を進めることである。それ以外に未来はない。
今日10月8日、私の新刊「世の中を変えたいあなたへ」(あけび書房)の広告が「「京都新聞」に掲載された。明日10月9日には「「東京新聞」に掲載される。現在の政局のもとでの共産党の動向を理解するためにも購読してお読みください。
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