志位和夫氏によるアジア政党国際会議報告の情勢ならびに課題についての認識に欠落したり誤ったもの 12月4日 鈴木元
アジア政党国際会議が11月21-23日、カンボジアの首都プノンペンで開催された。この会議に日本共産党(以下、共産党)を代表して志位和夫議長(以下、志位氏)が参加した。昨日12月3日の赤旗に志位氏によるこの会議の報告が2ぺージに渡って掲載された。しかしそこでは志位氏独特の認識から重大な欠落・誤りが露呈していた。
(1)トランプのトも習近平の習もない。
今日、東南アジア、東アジアを含めたアジア地域の情勢や平和の問題を考える場合、アメリカ大統領選挙に当選し「アメリカファースト」で個別折衝によってアメリカ優位に持ち込もうとするトランプ次期大統領についても、「偉大な中華民族の復興」を掲げ、絶対譲れない核心的利益として南シナ海や台湾・尖閣周辺において軍事的挑発行動を繰り返し行っている中国について一言も触れていない。これでどうして平和の課題についてまともな政策を論及出来るのだろうか。
(2)中国が許容する範囲の共同宣言
共同宣言には中国が反対するため現在平和の課題において緊急の課題である「核兵器禁止」が入れられなかった。ロシアのプーチン大統領は「核兵器の使用もありうる」と明言し世界は重大な状況に置かれている。しかし前回の国際会議において中国が反対したために、今回は最初の案文段階から「核兵器禁止」の項目は入れられなかった。志位氏が言う「対話と包摂で平和をつくる」という考えは中国にとってもロシアにとても反対する必要はない許容できるものである。
(3)外交と軍事抑制を二律背反的に扱い、話し合いと外交だけに終始
アメリカやヨーロッパ諸国そして日本政府はロシアの軍事侵攻、中国の軍事挑発にたいして軍事抑制論だけに傾いている。志位氏の「対話と包摂で平和を」はその逆さまの主張である。志位氏は「対話と包摂」だけでロシアの軍事侵攻や中国の軍事挑発を止められると思っているのだろうか。それは世界の現実をリアルにみた見解ではなく自己の論理に酔った空論である。一定規模の軍事抑制力を背景にした外交交渉抜きに現実の打開はないことは冷厳な事実である。
(4)限りなく中国の従属下に置かれているカンボジア・ラオスの現実
中国は雲南・ラオス・カンボジア・インド洋にかけて鉄道・道路網をつくりラオスやカンボジアを従属下において行っている。今回会議が開催されたカンボジアの首都プノンペンやラオスの首都ビエンチャンの街を歩けば多くの中国人と黒人が歩いていることに気が付くはずである。アフリカに進出している中国は現地に中国旅行社の支社を設置し、裕福な黒人をラオスやカンボジアに旅行者として連れてきているのである。海外旅行に行ける様な裕福な黒人でも欧米に行けば露骨な黒人差別を受ける。比較的黒人差別の少ないアジア・東南アジア、とりわけ中国の影響力の強いラオスやカンボジアに連れてくるのである。街を歩けばスマホを首からぶらさげた黒人が家族連れで沢山歩いていることに出会う。志位氏はホテルの中だけにいてそうした現実を見ていないのか、そうした現実に関心がないのか報告の中にはそうしたことが一言も触れられていない。今回の会議の議長国はアジアの中で最も中国の影響力の強い国であるカンボジアである。宣言案文もカンボジアがイニシアチブを取って起案した。プノンペンに行きながら、そうしたことを直視出来ない志位氏の国際感覚が疑われるのである。
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