鈴木元氏が最新の論考をFacebookに投稿 自壊して敗れた共産党、抜本的な再生に取り組まない限り自滅への道を進む

鈴木元
自壊して敗れた共産党、抜本的な再生に取り組まない限り自滅への道を進む
 常任幹部会声明批判   総選挙総括NO2 10月29日 鈴木元
 昨日28日、私は開票結果の議席数が確定した午前5時30分付でNO1を投稿した。その時、得票結果と党の声明が発表された段階でNO2を出すと書いた。今日29日の「赤旗」に常任幹部会声明(以下、「声明」)が出された。合わせて得票結果も明らかになったのでNO2を書いた。

(1)選挙結果を具体的に分析できる力もなくなったのか

政権与党の自公は87議席を減らし過半数割れを起こすとともに得票も自公合わせて比例で650万票減らした。立憲は様々な組み合わせで議席こそ37増やしたが得票ではわずか6万票しか増やしていない。それではどこに行ったのか、国民が357万票、れいわ159万票増やした。参政党が新たに187万票、保守党が新たに114万票を獲得した。維新(マイナス296万票)ならびに共産党(マスナス80万票)は受け皿にならなかっただけではなく減らした。。
 したがって自公減の受け皿の中心に616万票獲得した国民がなるとともに、多少左気味のれいわが380万票獲得し議席を3から9へと前進し政界での位置を高めた。共産党はわずか5年前に創立されたれいわに議席も得票も負けた。つまり衆議院において自民・立憲・国民・維新・公明・れいわの次の7番目の、わずか8名しかいない政党に落ちぶれたのである。今後世論調査の対象外になる危険もある。
 れいわに相対して新しく登場した右派政党の参政党と保守党がそれぞれ議席を3確保し得票は合わせて300万票獲得した。ヨーロッパではないが今後この右派的潮流の動向に注意する必要がある。

(2)金権腐敗追及・自公政権打倒の一点共闘拒否し、今後の政局にどう向かうのか不明

 先の総選挙において立憲は政権交代を掲げ、金権腐敗政治の一掃、金権候補43名に対して候補者統一によって落選させる一点共闘を申し入れたが共産党は「金権だけの共闘では駄目」と拒否した。自公政権の自民党・公明党が過半数を割り政局は来年の参議院選挙・都議選に向けて流動化に入った。自民党は無所属の取り込みと合わせて国民などの協力を求めるだろう。一方、立憲は近く開会される国会での首班指名において野党協力によって多数を獲得するために動くだろう。共産党はこの流動化の下でどのような政権構想を提起するのか一切書かれていない。政党としては失格である。

(3)ピントはずれの言動を繰り返してきた志位議長

 今度の総選挙に向かって志位氏はピントはずれの言動を繰り返してきた。
 1月4日の「赤旗」で年末にでかけた欧州訪問報告を4ページわたって掲載した。そこでは政局について触れてないどころかガザやウクライナについても触れず、チェコのある都市で共産党が増えたことを「中欧でも共産主義の躍進」と評価した。続いて党大会において「共産主義は先進国が大道」と位置づけ。さらにこれを踏まえ都知事選挙の最中に全党に対して「共産主義=自由」「共産主義=自由時間論」なる講演を行い全党に学習を呼びかけた。200年300年先の共産主義についての願望的作文を述べるのは現実の日本における厳しい政治闘争からの逃避である。それらを本としてまとめ発売した。それどころか衆議院選挙の最中、京都をはじめ街頭演説においてこの本を片手に持ち宣伝し講読を訴えた。こんなバカげた言動を行う人を党首として担いで選挙での前進などありえない。

(4)小選挙区の乱立は失敗、供託金没収による財政破綻をどうするのか

野党共闘を拒否した共産党は比例での前進のためにと称して可能な限り小選挙区で候補者を擁立するとして前回(105名)に倍する213名もの 候補者を小選挙区で擁立した。私は小選挙区で多数の候補者を擁立したからと言って比例区で得票が増えるとは限らない。それどころか少ない専従者で急遽、小選挙区の候補者を擁立しようとしたらその実務準備に手がとられ比例のために全党運動を組織することに困難が生まれ後退する危険があると指摘した(実際80万票が減った)。合わせて小選挙区の候補者の供託金(1人あたり300万円)の負担が地方党組織に強いられ地方党組織は財政破綻に追い込まれるだろうと注意喚起したが志位指導部は強行した。300万円×213人として6億3900万円を用意しなければならなかった。借金して集めた様であり返さなければならない。ところが総務省の29日の発表によると、213人の3分の2に当たる143人の得票が有効得票の1割に達せず供託金没収の対象になることが判明した。その金額4億2900万円である。3年前の3倍である。ただでさえ財政困難に陥っている共産党はこれをどうするのか。専従者の年末一時金カンパとして集めたものをこの借金返済に充てなければならない党組織が生まれるだろう。ただでさえ給与の遅配・欠配にあえぐ地方党組織の専従者はそれを支える教員や看護師などの妻も多い。苦労しながらも数百万円程度のたくわえを持っておられる人もいるだろう。党専従者の夫が妻に頭をさげ供託金のために借りた人もいるだろう。この300万円は返ってこないどころか年末一時金も支払えないという事態が全国で起こるだろう。間違った方針の犠牲者はいつも下部の人たちである。

(5)消えた「反共攻撃」「130%目標」「特別期間」の言葉

 今回の「声明」には過去の声明にはあった言葉でなくなったものがある。それは①厳しい反共攻撃で党の躍進が止められたという言葉である。今回の選挙の投票日直前においても市田副委員長などは「階級闘争の弁証法」と言って共産党の躍進を前にして反動勢力は反共攻撃を強め党の躍進を抑えようとする」などと語っていた。
 共産党が躍進したのは1980年代までのことであり、それ以降はずっと後退し続けてきた。衆議院議員は41名から10名に「赤旗」読者は385万から85万にいずれもこの40年間で四分の一に減ってきて、反共攻撃などの必要もなくなり、もう10年以上そのようなことは起こっていない。私は、後退は共産党の自壊作用でありそれを正さなければならないと書いてきた。今回の声明では反共攻撃という言葉が消えた。②この共産党攻撃を打ち破り党の前進のためとして「党勢拡大月間」を繰り返し党を極端に疲弊させてきた。今回の声明では参議院選挙・都会議員選挙のために「強く大きな党づくり」という言葉はあるが「党勢拡大のための月間」という言葉も消えた。もはや党勢拡大の月間方式は破綻したのである

(6)敗北の責任を明確にしない志位指導部

選挙が終わり敗北・後退した他の党では責任問題が浮上している。
自民党はいまのところ石破氏の続投の方向を確認しているが、小泉選対委員長は「これだけ敗北し誰も責任を取らないわけには行かない」と石破総裁に辞任を申し入れ認められた。    公明党の石井代表は公明党の後退と自分の落選のけじめをつけるため辞意を表明している。維新の吉村共同代表は維新の後退という事態を前にして党首選挙を行うべきであると表明している。
後退した共産党はどうするのか。21年総選挙で敗れた時、立憲代表の枝野氏は「敗北責任は明確にしなけはばならない」として辞任し党首選挙が行われ泉氏が当選した。それに対して共産党の志位氏は「方針は間違っていなかったのに、負けたからと言って辞める必要はない」と語り辞任しなかった。今回はどうするのか。「声明」では「責任を痛感しています」とか「お詫び申し上げます」という言葉はあるが「責任を取る」という明確な言葉はない。
 ところで先の党大会で23年間、幹部会委員長を務めてきた志位氏は降り田村智子氏が委員長に就任した。ところが第一回中央委員会総会において、田村氏は「国会において党を代表し」「党活動全般については志位議長が代表する」と確認されている。共産党の党首は志位和夫議長である。長年選挙で後退した上に今回の敗北である責任を取らなければならないが取りそうにない。敗北を続けた日本軍の指導部が責任をとらなかったのと同じ無責任体制が党内において道義的退廃を生み、党内とりわけ上下関係がある専従者世界でパワハラ・セクハラが横行する事態となっている。
 2023年、党改革を述べた松竹氏・鈴木に対する問答無用の除名が行われ国民から大きな批判を浴びたが反省し撤回するのではなく、それに疑問や批判を行う党員を次々と排除してきた。これが党内の士気を下げ結集力を弱めてきた。今回の選挙では300万人の後援会員への選挙協力の訴えの届けが13%程度という事態となり、今回の「声明」でも前回選挙と比較しても半分の行動力になったと書いている。明らかに自壊しているのである。もう自滅寸前である。今、松竹氏と鈴木が提唱しているように党首公選制の実施などの党の再生を目指す改革を行わない限り共産党は自滅する危険にさらされている。しかし行わないだろう。結局のところ志位指導部の人々は党首公選制の導入によって他党と同様に失敗すれば落とされる民主主義がいやで自分たちの特権を維持したいだけなのでである。しかしこれらの人々の私利私欲のために党が自滅することは歴史的悲劇であるが、ソビエト共産党を含めて、これまで崩壊した共産党は全てそうであった。
 なお10月28日の常任幹部会の決定で衆議院議員を勇退した穀田国対委員長に変わって塩川議員が国対委員長に就任した。

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