自公過半数割れか、政界再編成は? 10月16日 鈴木元
衆議院選挙が始まった。最大の注目は自公が半数を維持して政権を維持できるかどうか。
解散を前後する何回かの党首討論を見た。石破首相は論戦慣れした語り口で巧みに語るが肝心の「裏金問題」についても、核兵器禁止条約の問題についても結局のところ一歩踏み込んでの改革について語らず、広く国民的に見て極めて厳しい状況に追い込まれている。
このまま推移すれば自公は両党合わせても衆議院の過半数を割るかも分からない。15日発行の「日刊ゲンダイ」(16日号)で「衝撃予想 自民党58議席減 自公過半数割れるか?」と報じた。石破総裁は予てから「公認を得られなかった人でも議員に返り咲いた人は公認する」と言っているので、彼らを合わせると過半数を維持できるかもしれない。ただNHKが別に行った調査では、選挙に当たって何を判断するかで第一位は経済であったし、12名の非公認をどう評価するかで第一位が「まあまあ」で「不十分」を上回っていた。そして野党共闘に「期待しない」が「期待する」より上回っていた。実際小選挙区の9割り以上で野党が乱立し自民党を利しているなどを総合的に考えると私は自公が過半数を割るという断言は出来ないと考える。なお小選挙区289選挙区において前回21年の総選挙では213選挙区で野党共闘が整理していたが今回は45選挙区である。
なお選挙の投票は比例と小選挙区で行われるが,比例は政党名を書くので自民党は厳しい、小選挙区は一人しか当選しないので相対一位の自民党に有利である。したがって自民党は小選挙区に力を入れる。野党分立している立憲は比例を重点にした選挙を行うだろう。マスコミでの露出度が多い立憲は反石破・反自公の受け皿として比例で増える可能性があり、同じく比例を軸にしている共産党は影響を受けるだろう。
例え自公が過半数を割っても、立憲は単独で過半数を獲得出来ないので、その場合「野党連合政権」を作らなければならない。これまでの野田代表の発言から推測すると、国民・維新が対象になるだろう。ひょっとすると自民党の高市氏が自民党から脱党して新しい党を作り野田立憲と手を結ぶかも知れない。すなわち政界再編成が起こるかもしれない。いずれにしても共産党は是々非々で協力することはあっても政権入りすることは無いだろう。
反石破・反自公の流れがあるのは間違いないが、それが共産党躍進の風になるだろうか。それを攫み取る力があるだろうか。21年の衆議院選挙、22年の参議院選挙、23年の統一地方選挙、その後の沖縄県議選、東京都議補選の何れも大敗している。そして声高く言い続けている党勢拡大も前回21年の総選挙時より大幅に後退している。客観的に見て、共産党に風が吹いているように見えないし攫み取る力も後退している。ところで小選挙区で野党が分立し自公を有利にしていることは国民の共通認識となりマスコミで報じられているが、野党共闘を拒否した共産党の責任を問う声も強まっている。少なくとも共産党に有利には働いていない。いまからでも遅くない。是正しなければならないだろう。宮城県では五つの選挙区全てにおいて候補者調整が行われた。英断である。後退している共産党が現時点で風を起こすとしたら斬新な政策だろうが、どうだろうか。
総選挙政策が発表されたので読んでみたがどの項目もまともである。しかし従来からの主張の羅列で新鮮味が無いし、メリハリが乏しく政策で風を起こせるとは思えない。13日に志位議長が京都駅前のタワーホテル前で街頭演説を行ったのて聞きに行った。総選挙政策が総花的な事と志位氏の年来の弱点が重なり40分も総花的な演説を行い、不特定多数の通行人を止める街頭演説ではなかった。屋内集会での講演会スタイルそのままで、しかもメリハリが無く何を中心的に訴えているのか分からない「講演」であった。しかもよせばいいのに自らの「共産主義と自由」の本を片手に持って是非購読しでほしいと訴えていた。その上「現在45000部売れています。100000部売り上げたいのでご協力をお願いします」とまで訴えた。ある意味では党私物化のピント外れの演説であった。誰も止められない所に悲劇がある。まさに諺にあるとおり「魚は頭から腐る」の通りである。
昨年(2023年)の統一地方選で共産党は大敗北した。松竹氏ならびに鈴木が党首の在り方は党内問題ではなく国民的政治的問題であるとして、それぞれの本で「党首公選制の導入」を述べたのに対して志位指導部は「党規約違反」として除名処分した。それに対して国民そしてマスコミが「やりすぎではないか」と意見を述べたことにたいして、志位委員長(当時)は声高に「朝日新聞(マスコミ)に指図される筋合いは無い」と反駁したことに対する国民的批判を重要な要素として2割もの議員数減となったのでのある。
「松竹氏の除名は間違い」と意見した福岡県の常任委員である神谷氏を県委員から解任し市会事務局員としていたが1年後に除籍・解雇した。それを批判した元福岡県会議員候補砂川絢音氏を除籍した。こうしたことが国民的支持を失うだけではなく党内でも次々と批判・離脱を起こしてきた1年間であった。青森市の共産党議員6名の内2名が離党した。東京の東大和市の3名の市会議員の内、2人が別会派つくり党員の市会議員は1名になった。全国的にも知られている栃木県の書店かぴぱら堂の店主露久保健二夫婦にたいして栃木県委員長小林年治氏が訪ねてきて「福岡の神谷氏の除籍についてあれこれ言うことは規約違反であり直ちに止めなければならない。止めない場合は、党員として資格に関わる問題である」と警告した。共産党は近く露久保夫婦も除籍するだろう。こうして際限なく除籍・除名を続けていては党の躍進は難しいだろう。
自民党の金権三悪人、下村・西村・萩生田の内、下村・西村の選挙区では共産党を含めて野党候補が乱立しているので下村・西村の当選の可能性が高まった。東京24区の萩生田氏にたいして立憲の有田氏が立候補しているが共産党は候補者を出していない。共産党はどうするのか、すなわち有田氏を支持するのか自主投票にするのか明確にしなければならない。有田氏は共産党から不当に除籍された人物である。除籍は問題ではなく政治革新のために頑ばっているかが判断基準として支持するなら、今も共産党支持を明確に表明し様々な民主運動に参加している松竹・鈴木を排除する理由はない。
共産党は野党共闘を拒否し比例票を増やすために可能な限り小選挙区での立候補者を増やすとして前回の倍近い200名を超える候補者を出した。今のところ私しか言っていないが、200名超える小選挙区の候補者に手を取られ、比例を軸にした全党行動の足かせとなり、比例は得票増どころか逆に減になる危険さえある。また候補者一人当たりの供託金300万円(全国で6億円を超える)も地方党組織(中央は負担しない)の桎梏になるだろう。
今日16日付「赤旗」において共産党常任幹部会の「告示にあたっての声明」が掲載された。そこでは「頑張れば頑張っただけ結果につながる選挙ー共産党躍進へ いま主体的活動の大飛躍が必要です」と述べている。これで飛躍しなければ、ましてや後退すれば、いつもの「政策・方針は正しかったが、党員が頑張らなかった(運動量が足りなかった)」と下に責任を負わす「総括」になるだろう。
今、今日から始まった期日前投票に行ってきた。党改革を提起した私を問答無用に除名した欠陥だらけの共産党であるが、現在の日本の政局を考えた場合、共産党のこれ以上の後退は良くないと考え共産党に投票してきた。志位指導部はこの気持ちを理解して改革してほしいが無理だろう。
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