鈴木元氏がFacebookに日本共産党の第29回党大会決議案について論評

鈴木元

今年3月、日本共産党から不当に除名処分を受けた鈴木元氏が、同党の第29階党大会決議案についての論評をFacebookで公開しているので、全文を転載する形でご紹介したい。


第29回大会決議案について
 昨日11月15日の「赤旗」に次期29回党大会の決議案が掲載された。長文なことと、その大半について、既に私がこのフェイスブックで論じて来たことなので、あえて全文にわたって検討・論述する必要は無い。しかし無視出来ない点や、いくつかの新しい論点について触れておく。


(1)内外情勢について
 国民の生活困難や、それも反映した岸田政権の支持率低下など社会の現実を捉えた記述は当然である。ただ問題は①世界と日本の動向が、共産党が綱領改定などで述べてきたことであり党の政策・方針の正しさをを証明したものであると論じ、あたかも世界と日本が共産党の政策・方針で動いているかのように記述されていることである。「赤旗」一紙しか読んでいない圧倒的多数の党員はそういう見方で納得するかもしれないが普通の人はそうは思わない。②正しい方針を掲げている共産党が前進しない理由は大規模な反共攻撃であるとしている。しかし冷静に、今、五大紙を含めた日々のマスコミ報道を見れば、大規模な反共攻撃など行われていない。こうして行われもしていない反共攻撃に責任を負わすのは、党の現状を正しく見れず対策も間違ったものになる。


(2)「野党連合政権」について
 今回の党大会決議案で明確に変わったのは「野党連合政権」という言葉が消えたことである。私は自公政権を倒し国民のために少しでも良い政権を打ち立てようとすれば野党連合政権しか無いと言う点では共産党の指導部と意見は一致している。しかし野党連合が出来ないのはマスコミの攻撃や他党の言動だけの責任で、共産党は何も考えなくていいのだろうか、2021年の総選挙の時、「閣外協力」が約束であったにもかかわらず、共産党の弁士はあたかも共産党も入った政権が目標であるかのように語った。それに対して自民党の麻生副総裁などは「立憲共産党」などと言って反撃した。田村副委員長は選挙直後の記者会見で「共産党も入った政権を言えば言うほど聴衆が離れていく雰囲気を感じた」と述べツィターにも掲載されたが、あくる日に消された。
 しかし志位氏などは21年総選挙について「はじめて共産党が入った政権が展望された」「これをおそれた支配勢力は反共攻撃を強めた」と述べてきた。「共産党が入った政権」などは野党共闘の約束ではなかった。また自公政権が倒れ政権交代が起こるような情勢で無かったことは明瞭であり志位氏の期待過剰な妄想であった。先に立憲の泉代表が各党に挨拶周りに行った際、共産党は明くる日の「赤旗」の一面トップで「選挙協力で合意した」様に扱ったが、それを見て国民の玉木代表は泉氏の来訪を拒否した。野党連合を実現していくうえでもっと慎重な対応が必要であったと考える。10中総後の記者会見で志位委員長は「自民・公明・維新・国民の悪政連合」と評した。「国民」の言動にいらだったのだろうが、泉代表も野党の選挙協力で動くのが困難になった。労組「連合」もかかわった複雑な政党間関係を上手に繋いでいこうとする工夫した発言とは思われない。上手に工夫したからと言って野党共闘が出来るとは言わない。しかし長い目で見て野党共闘しかない時に一時の困難に目を奪われたもの言いは注意した方がよい。


(3)党建設について
 大会まで2カ月しかない。現状は130%目標達成の目途どころか、前回大会から後退の状況を克服できそうにない。そしていつものように「しかし前進の足がかりを作ってきた」としていくつかの地区・支部の例を上げている。300余りの地区、17000の支部がある。いくつかの地区や支部で増紙したところはあるだろう。しかし全党的には前回大会よりも後退している。それどころか1980年の第15回党大会以来、40年余り党大会ごとに減り続けてきているのである。その現実に目を向けその原因を探り打開策を示さなければならないのである。共産党の大きな欠陥は事態を直視し総括し打開の道を探らない、すなわち総括しないことである。これでどうして科学的な党と言えるのだろうか。


(4)「民主集中制」について
「我が党の民主集中制の原則は、外国から持ち込まれたものではない」との新説(珍説)を書いている。日本共産党はコミンテルン(世界共産党)の日本支部として結成された。その際、組織原則としてコミンテルン流の民主集中制が義務化されていて、それを条件として加入を認められ財政支援も受けていたのである。戦後、次第に自主独立へ進む中でコミンテルン時代の民主集中制を少しづつ変えてきたことは明確である。しかし「外国から持ち込まれたものではない」は歴史的事実と異なるし、何処を変えてきたかも言えず、自らの努力も証明できない。余りにもお粗末な論と言わざるを得ない。
なお決議案では「国民の多数者を革命に結集するという役割をはたすためには民主集中制という組織原則を堅持し・・」と革命という言葉を使って「合理化」している。改めて革命とは何か、革命政党とはなにかを国民に説明し納得してもらう必要があるが、説明されていない。
そして私・鈴木元という名前を上げていないが、こうした事実と異なる言説を「志位和夫委員長への手紙」で批判していることを「党の外から攻撃する行為は規約違反になる」としている。明確に歴史的に違うことを指摘すれば規約違反で除名とするやり方を続ける限り、ジャーナリストや研究者の党員は発言できないし、国民は納得しないだろう。


(5)「科学的社会主義」について
 私はマルクス主義の名においてなされたロシア革命・ソビエト建設が失敗した今となっては
マルクスを乗り越える必要があると説いてきた(「ポスト資本主義のためにマルクスを乗り越える」(かもがわ出版)。今回の決議案では「綱領・規約・党史・科学的社会主義の一大学習運動に取り組もう」と呼びかけている。その際の科学的社会主義の学習として不破哲三氏が所長をしている社研(科学的社会主義研究所)が編纂した「新版資本論」と不破氏の著作である「資本論全三部を読む」の学習に挑戦しようと書いている。馬鹿げている。常任幹部会員30名の中でも「資本論」を読んだ人は半数もいないだろう。「読んだことがある人は名乗り出てほしい」とい言いたいぐらいだ。名乗り上げた人には私が資本論の記述について質問する。まともに答えられるか楽しみである。いずれにしても全党員に呼びかける方針で無いことは明確である。


(6)松竹伸幸氏の「党籍回復申請」をどう扱うか
 私と同様に除名処分された松竹伸幸氏は規約第55条(被除名者が処分に不服な場合は、中央委員会および党大会に再審査を求めることができる)に基づいて党大会にたいして「除名処分を取り消し、党籍を回復する」ように再審査請求を要求し文書を届けている(詳しくは松竹氏のブログを見てください)。これに対して第10回中央委員会総会後の記者会見において志位委員長は「それは党大会が決める」として態度を明らかにしなかった。次期党大会の重要議題である。共産党は規約通りに党を運営するかどうかが問われている。
他にもいろいろあるが、この辺で止めておく。


 既にお知らせしている私の次の新刊「さようなら志位和夫殿」(かもがわ出版)は党大会に間に合わせるために第一次校正で校了して出版を早めた。その結果、当初、発売は12月中旬を予定していたが12月8日に取次に下ろし、12月10日発売となりました。
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